『沖縄煌めき人』vol.2 「沖縄に根ざし花となる」〜中村 一枝〜

ナレーター・ラジオパーソナリティー/カフェ・スタジオ「ROSSO×ROSSO」オーナ―

沖縄県内では誰もが耳にしたことがある、沖縄で愛されるおなじみの声。

 

 

 

中村 一枝

声の仕事人。
ラジオ番組を始め、テレビ番組やC Mナレーション、イベント司会、
海外ドラマの日本語吹き替えなど幅広く活動中。また2014年2月に
会社を立ち上げ、経営者としても新たな一歩を踏み出している。
趣味は料理。琉球古典音楽野村流保存会 師範。
うるま市田場の『スタジオカフェ ROSSO×ROSSO』オーナー。

 

レギュラー番組
RBC iラジオ 朝9時~「ジブンジカン」月~水 パーソナリティ
RBC 夕方6時55分~「気ままにロハススタイル」ナレーター
RBC 土曜日夕方5時25分~「コープおきなわ ハッピープラス」出演
台湾ドラマ「結婚って、幸せですか?」
アイリン役 日本語吹き替え(TSUTAYAにてレンタル中)

 

 

 

 

沖縄出身の両親を持ち、愛知県で生まれた彼女が、沖縄を選んだいきさつから尋ねてみた。

ある時期から自分のアイデンティティのルーツである沖縄をより強く感じたいという思いが沸き起こってきました。そこで、二十歳の時に就職のタイミングで、半ば脱出計画のような感じで沖縄の地を踏むことになりました(笑)

 

 

 

その肝心の沖縄でのお仕事は?

 

はじめは教員として3年間。そのあと、より沖縄を感じるためには、沖縄の情報が一手に集まるマスメディアの仕事ということで、NHK沖縄放送局にインタビュアーとして3年間。そして、インタビュアーの契約が切れ、ついに愛知に帰るかという時に、ちょうどFM沖縄から新番組パーソナリティーへの誘いがありました。まさに渡り船といった感じでした。しかし、いざやってみると、TVの時とは勝手が違っていてそこからまた一苦労でした。

 

具体的にどこが違いましたか?

 

インタビュアーは相手の話を引き出す側なのですが、ラジオパーソナリティーは、自分が喋らなきゃいけません。自分の体験や感情をどんどんさらけ出していかなくてはいけないのですが、最初はその心のトビラがなかなか開かなくて苦労しました。どこまで出せばいいのか?こんな自分の話をきいて喜ぶ人がいるのか不安にもなりました。

とは言え、その不安も時間とともに解消し、トークの中で素も出せるようになってきました。そうするとリスナーさんも多く参加するようになり、やっとラジオを楽しめるようになって今に至るという感じです。

そしてそこから派生したかたちでナレーターのお仕事や、司会業というかたちで仕事の幅が広がっていきました。

 

現在、沖縄県を代表するナレーターである彼女のこだわりや目標を尋ねてみた —

 

全ての仕事にプロ意識を持って望んでいるのですが、ナレーターという職業には、また特別にやり甲斐を感じています。

 

理想のナレーションというのはありますか?

 

目指しているナレーションは「いかりや長介」さんです。

「人生の楽園」のナレーターをやっていた時のナレーションが本当に素晴らしい。普通の感情でそのまんま見たとおりに話しているような、まるで原稿が全く無いようだけどナレーションとして成立している。その自然さたるや最高だと思います。あれを目指しています。「その人が感じたこと感じたようにしゃべっているようなナレーション」そこを目指したい。原稿が見えるナレーションじゃまだまだだと思います。

 

 

 

とはいうものの、現場にはクライアントの要望を含むディレクション(指示や要求)が必ず入ります。どうバランスをとっていますか?

 

まず早い段階でディレクションのとおりにOKテイクを決めちゃいます。はやく決めて、スタジオの時間に余裕を持たせることができたらチャレンジです。長くやっていると「中村一枝はこんな感じ」というイメージが付いてしまいがちなので、それをいかに壊していくかという作業を自分でしていかないと、新しい仕事は来ないと思っています。原稿や台本以上の仕事がしたいと常に思っています。

 

二十歳の頃に思い立ち、アイデンティティを求めつつここまでキャリアを積んできた彼女だが、沖縄こそが、うるま市こそが、やっと根っこが張れる場所だという確信も感じているという―

 

家族もできて、家も建てました。夫の地元なのですが、公民館にも足を運びます。また娘を通して地域との交流もあるし、うるま市の仕事はなるべく断らないようにもしています。地域の人間として生きていくためにどんどん地域に入り込んでいきたいと考えています。娘が小学校に入ったら、読み聞かせなども参加していきたい。根を伸ばせて大きな木になった時、何かうるま市に還元できればとも考えています。

 

母親という側面にも触れてみたー

 

実は「お母さん」に一番なりたかったんです。高校生ぐらいの頃から「子育て」に漠然と憧れのような感情を抱いていました。「お母さん」というのは「教師」「コック」であり「看護師」である「全て」なんです。子どもと一緒に育っていきたいですし、自分自身にも広がりが持てると思っています。ですから子どもを授かったのはとても嬉しい出来事でした。

 

 

 

 

子育てと仕事の両立はやはり難しいですか?

 

実は、私の中では子どもが生まれてからは、専業主婦になる予定でした。

もしかしたら今が一番忙しくなってしまっているのかもしれません。子どもに申し訳ない気持ちでいっぱいです。そこで、子どもには強くなってもらうしかないと思い、私達の仕事ぶりから何かを感じ取ってもらえたらという考えから、休日などは、条件が許せば現場に連れて行ったりして時間を共有しています。(一週間ほど顔を合わせられないようなときもあるという)

 

そして、自身がオーナーを務めるスタジオカフェ「ROSSO ROSSO」の話へ―

 

私は、「スタジオがほしい」、夫は「イベント小屋がほしい」ということで最初はライブハウス的な録音と発表ができる空間づくりから構想はスタートしました。

 

 

 

最初の構想では飲食店ではなかったのですね。

 

そうなんです。「平日も稼働させたいよね」、「みんなが集まる場所になるといいね」など、いろいろな「そうだったらいいね」をカタチにしていくと今のスタイルに行き着いてしまいました(笑)

 

ご苦労もありましたか?

 

ありました。飲食は大変だとわかっていたのですが、想定外でした。運営が形になるのにおよそ1年かかりました。2年目に入りやっとライブやイベント行ったりと、やりたいことが少しづつできてきた感じです。スタジオはまだうまく稼働できていませんが、朗読や季節に合ったナレーションのサービス(大切な人へ子や孫からメッセージなど)をここからもっと発信していけたらなと思っています。

 

 

 

 

沖縄に、地域に根ざし、花を咲かせる―。

彼女のそうした姿勢が、自然に人を惹きつける魅力を生み出している。

 

 

 

 

 

うるま市田場の『スタジオカフェ ROSSO×ROSSO

住所:沖縄県うるま市字田場955-1
予約・問合せ:098-989-8511 (月曜定休)